人気がない分野と言えばメータースタンプ(略称MS)あるいはフラマなどと呼ばれる郵便料金計器による証紙がその最たるものでしょう。機能一辺倒で味気ないデザインだとの先入観・偏見が根強く、これを収集しているのは特にマニアックな人々であるとも。しかし、私はカッコいいと思います。カッコいいがゆえに集めています。
具体的にご説明します。1950年(昭25)9月、料金前納用機械が東京中央郵便局に配備されました。同年11月1日から横浜郵便局、1951年(昭26)5月18日から大阪中央、神戸中央両郵便局にも配備されました。さらに全国の主要郵便局に拡大されていきました。なお、郵政省(当時)では名称を1952年(昭27)から「郵便料金計器」と改め、以後、現在に至っています。この最初期に配備されたのがナショナル計器のN1900型というタイプです。1960年(昭35)までの10年間にわたって外国郵便専用として東京中央郵便局ほか23局で配備・使用されました。最終的には1970年(昭45)をもって廃止されました。
よく考えてみてください、終戦後わずか5年後のことなんですよ。産業図案切手の時代が終わり、昭和すかしなしや動植物国宝切手の発行が始まったその時代になんと端正なデザインではありませんか。今とは違って封筒への直接印字はできす、堅牢な裏糊付き用紙に印字したものを貼る仕組みでした。しかも、その実逓使用例は外国向けですから、高度成長前の貧しい国内状況とはまるで別世界のようです。局名表示の両脇に向かい合わせに白いハトが描かれている、まさにこのデザインがカッコいいと思うのです。
実例をご覧ください。日本航空がイギリスの航空業界誌の編集部に送ったものです。エアメールのエチケット(ラベルのこと)も日本航空が自前で調達したものです。東京中央の証紙がよくお似合いです。(TOKYO 1960.3.7)
2通目は瀬栄合資会社が差し出したものです。高知の尾長鶏のイラスト入り封筒を使っています。陶磁器を扱っていた会社だけに日本のイメージを強く意識していたからでしょう。切手貼りではなくとも証紙のサイズが大きいだけに迫力があります。(NAGOYA 1959.2.28)
主に最初期にあたる1950年代の実逓使用例をこつこつ集めています。普通は見向きもされないので雑品扱いなのが助かっています。高くても1通100円どまり、時にはタダでも誰も手を出さずに丸々残っていることすらあります。
大事なことなのでもう一度繰り返します。証紙のモダンデザインのセンスがカッコいいから集めているのです。資料的な価値云々ではなく、あくまでもカッコ良さ推しでの再評価を強く訴えます。
不要な方はぜひ私にください。実は制度導入年の1950年の使用例はいまだに未見なのです。それほどまでに顧みられていないのです。
参考:「日本のメータースタンプハンドブック」財団法人日本郵趣協会メータースタンプ部会(1987)