アメリカ テキサス州在住の若林貢さんからクリスマスカードをご恵送いただきました。それに押されていたインクジェット式 (?) 機械印の標語部に目が止まりました。貼ってあるGlobal Forever切手の図案はポインセチアだし時期も勘案すれば明らかにクリスマス。同封物ももちろんクリスマスカード。なのになぜHappy Holidayなのでしょうか。これについては2011年9月に我がHYPER Philatelistブログに詳しく記しています。その一部を再構成してお読みいただきます。
2004年末の記者会見でブッシュ大統領が「メリー・クリスマス」ではなく「ハッピー・ホリデーズ」と発言したことがつとに有名です。これは1990年代のアメリカに端を発したポリティカル・コレクトネス (political correctness) が起源です。言葉や用語に差別的な意味が含まれないよう政治的に正しい配慮をしようというものです。クリスマスはキリスト教徒のお祝いなので公平さを欠くからとかような発言になったものです。
これが郵趣面でいつ現れるかとずっと注視していたところ、2006年の代理発行エージェント切手に登場したのが私が記録している最古例です。数ヶ国で共同発行された中からドミニカの小型シートをご覧いただきます。印面にHappy Holidayと表示されているものの、図案はどう見てもクリスマス以外に考えられません。しかもシート地のタイトル部分にはメリー・クリスマスとはっきり書いてすらあります。このあたりがいかにもアメリカ市場を意識したらしい欺瞞臭がふんぷんです。
その後、アメリカ郵政公社は、従来からのクリスマス切手に加えてユダヤ教のハヌカー祭切手、アフリカ系アメリカ人のクワンザ祭切手、イスラム教のイード切手、そしてアジア系の年賀切手を発行することで問題をクリアしました。
やはり言葉を言い換えるのはその場しのぎに過ぎませんし、悪意を持った歴史の改竄行為にもなりかねません。今では「ポリコレ」と言えばリベラル派のインチキ・方便という悪い印象しかありませんね。本来、それぞれ固有の文化を表現する自由があってしか平等・公平を実感できないことを示していると思います。
Happy Holidayの標語印はアメリカ全土で使われているものです。どんな宗教のメッセージ郵便が投函されるかわかりませんので、やむをえず”Happy Holiday”とせざるを得なかったのかもしれません。しかし、来年から発足する悪夢のようなバイデン政権の始まりを暗示しているようでもあり冷笑を禁じ得ません。
◆元記事はこちら:差別郵趣