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切手投機反対キャンペーンシールの使用例

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 ベテランコレクターなら日本郵趣史の黒歴史である「沖縄切手投機」のことはご存知だと思います。1972年5月15日、長い米軍の占領が終わって沖縄は日本に復帰しました。世間の関心が沖縄に集っているのを利用し、沖縄切手を利用して架空の相場を吊り上げて沖縄切手を投機の対象とした業者がいました。図案的にもふさわしく、嘘の相場を形成するには程よい発行数がある切手(本当の品薄物では投機の対象にならないため)ということで、この守礼門3c切手が狙われました。いわゆるデッド・カントリー(亡失した切手発行国や地域)の切手は金銭的裏付けが失われるので、ほぼ例外なく価格は下落するものです。それを真逆に「価値が上がる」と煽ったのですね。
 これに対して当時の日本郵趣協会は1972年2月20日に投機業者のデマゴークに対する声明を出し、さらに4月に緊急常任理事会を開き、全国の会員に対して、投機はいずれ失敗するから手を出さないようにと警告を発しました。この投機反対キャンペーンの一環として投機のシンボルであった守礼門切手の複製シールが作られました。
 それと同調するように子供たちの健全な郵趣啓蒙を目的とした月刊スタンプマガジン誌も同年12月から発行が始まりました。

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 世に切手型シールの類はあまた現存していますが、それを販売口上通り、封かん紙代わりに貼った、身近な日用品にアクセサリーとして貼って遊んだ例というものはほとんど目にしません。最もよく使われているのは結核予防シールの「複十字シール」ぐらいで、たいていはそのまま保存、退蔵されたままです。
 この守礼門シールもキャンペーン用なのですから、実際に郵便物に貼られてPR活動に供された例をと探し求めていました。まあ、HYPER Philatelistしか注目しない「実逓使用例」ではありますが。
 ご覧の通りセロテープが上貼りされてしまい状態は芳しくないものの、山梨県甲府から山口県下関へと切手収集家どうしの郵便に使われている例をようやく入手できました。第29回国体の特印が押されています(甲府49.2.11)。架空の市場価格が崩壊し、切手投機が実質的に潰えたのは翌1973年(S48)5月25日です。その翌年の日付ですからまあまあでしょう。
 理想は切手と並べて貼って使われた「表貼り」で、なおかつ切手投機が行われていた期間中の使用例です。もしそのような例があればぜひお世話ください。

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 なお、守礼門シールは知りうる限りで2種あります。ひとつはこの日本郵趣協会製で銘版部分には「切手投機反対同盟製」とあります。この左翼趣味的なネーミングセンスはすっげえ嫌なんですが、この場合は無視しておきましょう(笑)。なお、その裏面には警告文も淡青色の文字で印刷されています。
 もうひとつは全日本切手商協会製造の銘が入ったもので、こちらの方が明らかに作りが見劣りします。目打も実際の穿孔ではなく印刷です。裏面には「模刻品」とのみ表示されています。
 なお、ついでに記しますと1972年(S47)6月1日公布の郵便切手類模造等取締法との許諾関係がいまひとつよくわかりません。いずれその点も掘り起こしたいと思います。

[フルシート画像]
日本郵趣協会製の方が縦寸法がやや長く、目打も逆抜櫛型(風?)にきちんと穿孔されています。

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(参考文献:「日本郵趣協会四十年の歩み」財団法人日本郵趣協会・1986)


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