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平成25年用・切手趣味週間のシート構成

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2013042201

 美しいカード制作でファンの多い山内和彦さんから表題のマキシマムカードが届きました。いつもありがとうございます。その文中に「今回、右隻の第一扇と左隻の第六扇(一番外側の部分)が切手に採用されませんでしたが、せっかくの大屏風、バックシートを使ってでも、全体を描いて欲しかったです。」とあります。さすがです、やはり気付かれましたか。これは一体どういう意味かわかりづらいと思いますので詳しくご説明します。

 1992年(H2)発行、馬と文化シリーズ第1集の「厩図屏風」をご覧ください。上が切手で下が原画です。62円額面の5種横連刷ですが一目で妙だとおわかりですね。そうです、屏風は本来偶数面ですから奇数の5種はありえません。原画右端の第六扇が省略されているだけでなく、本来はない瑞雲の加筆と位置移動処理もなされています。
 原画の傷みが激しい時や切手として見映えがしない場合は相応の加工を施すのは当然です。そのこと自体は常識です。ただし、日本は手を入れ過ぎの傾向があるのは否めません。憧れの月に雁やビードロ、写楽といった日本切手の名品と言われる原画を見られたことがあれば、切手の出来映えと原画のショボさとの落差を体感された経験がおありだと思います。ゆえに厩図屏風の場合は、やりすぎだ、美術作品への冒涜だという意見がありました。このことは、かつて「初日カバー、その新たなムーブメント」という記事でもご紹介しました。

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 では今回の切手趣味週間の場合はどうかというと、シート上段は左隻の第1扇から第五扇をトリミングし第六扇はカットされています。シート下段は右隻の第二扇から第六扇のトリミングで第一扇がカットされています。シート地左側の拡大図は省略された部分を用いるのではなく、右隻第三扇(シート上では7番切手)を再利用しています。原画はあくまでも素材であって、切手としていかに美しいかを主眼にしての大胆な画像加工方針であったことは容易に察せられます。

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 遺跡保存の場合とまったく同じで、ギリシャ・ローマのように経年変化で傷んだものは、下手に想像で補わずに現状以上に劣化しないことを主眼に維持するべき、という考え方があります。それとは逆に日本の伊勢神宮、出雲大社のように常若(とこわか)の思想に従い、最も良い状態で再建して保存するべき、その両方の考え方があります。
 アーティストの立場で言えばオリジナル作品を尊重すべきですし、デザイナーの立場では改変は必要だとも思います。正直なところ、私もどちらがふさわしいのか判断がつきかねています。


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